邦楽の正体

Youtubeの第一回「邦楽は純正律」といったが、これには少しだけ訳がある。

この狙いは、邦楽器で演奏するものが、音律を考えずに合奏している例が多く、平均律楽器であるピアノとの合奏をなんのためらいもなく行っていたからである。

まずは、平均律とは正反対になる純正律を持ち出し、和楽器の平均律演奏を思い留ませようと試みたものである。

厳密に言えばピアノとの合奏だけでなく、平均律で和楽器の演奏をしている人に対しても強く注意を促したかったが、そこまですると敵が多くなり、和楽器奏者自体も少なくなってしまう危惧があった。それ故、純正律とぼかした表現としている。

邦楽の本来の音は洋楽純正律とは異なる。

日本の邦楽の音律は東洋律と呼ばれるものであり、唐楽を基礎に改良された音律である。8度(オクターブ)、完全5度、完全4度においては洋楽純正律と同じだが、長三度と短三度は洋楽純正律とは異なる

 

洋楽式純正律はイギリスの音響学者エリスの「音程の主観的の値をすべて100倍にして8度を1200と定める」ことから始まる。「セントとは実質上log10 2が1200に等しい対数関係である」「セント値とは、それに対比する振動数比率の常用対数に正比例する」と定義される。

log10 2=1200セントとすれば

単位1=1200÷log10 2=3986.3136セント

この数値は、振動数比をセント値に変換する場合の乗数となる。

したがって、3:2は次のように変換することができる。

log101.5=3986.3136×log101.5セント=3986.3136×0.17609=701.953セント

 

東洋律(東洋式純正律)は三分損益法による音律である。三分損一と四分損一によって完全4度、完全5度を求める方法で、順八逆六法とも言っている。

この応用で五段音階を作り、更に七段音階を作り、最終的には12律音階をつくるものである。

 

 

 

 

 

東洋律の定義が明確でないので、西洋純正律と日本純正律という言葉を新設すれば音程値は以下の通りとなる。

 

日本の純正律は壱越(イチコツ)洋楽のD音相当を基準として求められている。完全5度、完全4度の上下で求めている。西洋純正律のセント値が出ているので、702、498を充てはめ数値を導き出している。オクターブは+24、長三度は+22、短三度は-22の差がある。

日本の純正律は長三度、単三度において西洋純正律とは異なり、不完全協和音とはならない。

これが、鎌倉時代より伝わっている邦楽の音律の正体である。

 

そして、中国伝来の普化宗尺八や蘆庵によって持ち込まれた一節切は唐楽の中国式三分損益法による調律であるから日本純正律とは完全4度や短三度が24セント高い楽器であることも推測できる。明治時代に尺八を改良し日本の純正律に合わせたと言える。これが琴古流尺八の音律の正体である。

 

(訂正)

上記の表中 中国式平均律の表と東洋律の表の左側第1欄の洋名標記が「C」から始まっていますが「D」からの誤りです。

東洋律を古律と表記を改め2つ目の図は次のようになります。

 

 

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作成者: roumei

琴古流尺八竹盟社仙台支部 谷内朧盟(たにうち ろうめい)

2件のコメント

  1. 三分損益や順八逆六は西洋音楽でいうピタゴラス音律と同じなので、東洋律などという新しい言葉を使わなくともよいと思います。

    1. コメントありがとうございます。東洋律という言葉を使っているのは、中国から伝わった三分損益法と日本の順八逆六法が混合して改良されたため音律に西洋純正律とは異なった部分があるためです。古典筝曲・地歌と尺八との合奏が本格的に始まった明治時代において、音律の研究が行われましたが、学校教育では西洋音楽中心に行われてきました。邦楽も古典邦楽から現代邦楽へと移行する人が多くなり、古典曲を演奏する人の数は年々減り続けています。現代邦楽の人が古典邦楽を振り返ったとき何が違うのかを紐解くには三分損益法と順八逆六法というキーワードが必要になると考えます。なお、「東洋律」という言葉は田辺尚雄氏の「邦楽家のための音楽理論」(昭和60年三版発行:初版は症は52年ごろ?)に使われていました。邦楽を絶滅させたくないとの思いでもありご理解をお願いいたします。

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