普化宗尺八の長さについて

先日Youtubeに「江戸時代の尺八で本曲を吹く」として2本ほどUPしましたが、ここで使っている尺八については以前にもUPしていて、その長さが1尺8寸でないためいろいろ仮説を立てて調べていました。

尺八の歴史考察でとった手法で各時代の度量衡で1尺8寸の長さを求めいつのものか判別する方法です。

ところが、どうしてもわからないのが江戸時代の尺八と仮定した尺八で、明治初期と思われるもう1管も長さが同じなので製管が誤ったというわけではなさそう。

当初は法燈国師が尺八を吹く奏を人連れて帰国したのが1254年とされることから、中国の宋時代の度量衡に合わせれば答えが出ると思っていたのですが、その時使った資料で1尺が31.2㎝でした。

今回、度量衡について再び調べていたら宋時代の1尺が31.7(31.68)㎝という事が「資治通鑑」の訳書にありこれを用いました。

日本の度量衡でも享保尺(30.4㎝)と当時の曲尺(30.2cm)で2㎜の差があり伊能忠敬が折衷尺として30.3㎝としたという事を知り、不明だった尺八の56.6㎝の長さを無事解決。

①宋時代の1尺8寸=57.024

②享保尺の1尺8寸=54.72

③曲尺の1尺8寸=54.36

④ ②-③=0.36

⑤ ①-④=56.664  → 江戸時代の尺八 56.6cm と符合

つまり、曲尺の長さが短かったことが原因のようです。いつから、曲尺が短かい表示をしていたかは分かりません。中国から尺八が持ち込まれていた時の1尺8寸管の長さは57.2㎝だったという事は確かだと思います。

明治初期に琴古流・都山流とも地塗り尺に改造されました。琴古流の尺八は3孔を狭め、5孔(裏孔)をそれまでの地なし延管よりも上にあげることで本曲と外曲に対応できる楽器を作り上げたと考えられます。

一方の都山流の尺八は普化宗尺八の指孔位置のままは外曲と新曲を意識した地塗りで補正をしたと考えられますが、昨今の楽器宣伝からすれば、かなり西洋音楽との合奏を意識した改良が行われていると考えられます。

古典本曲(琴古流本曲を含む)は地なし延管で吹いたほうが音的には柔らかい音色を出せますが、一方で運指のスピードを上げることができないという欠点があるはずで、三曲合奏には向かないと考えられます。

これ等を考えると古典尺八を吹こうというのであれば2尺管あたりの地なし延べ管が最良かもしれません。

地なし延べ管となれば自分で製管できる範囲にあり地塗り尺八の製管と比べハードルはかなり低くなりますが、最終の調律が課題となるはずです。

普化宗は禅宗の一派に分類されます。いまは普化宗は廃宗となっています。しかし、「吹禅」という言葉はあるようです。その「吹禅」とは尺八を通しての呼吸法の習得なのかもしれません。

 

 

 

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作成者: roumei

琴古流尺八竹盟社仙台支部 谷内朧盟(たにうち ろうめい)

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